泉 鏡花は、昭和初期にかけて活躍した日本の小説家である。戯曲や俳句も手がけた。 江戸文芸の影響を深くうけた怪奇趣味と特有のロマンティシズムで知られる。
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泉 鏡花（いずみ きょうか、1873年（明治6年）11月4日 - 1939年（昭和14年）9月7日）は、日本の小説家である。明治後期から昭和初期にかけて活躍した。
小説の他に戯曲や俳句も手がけた。金沢市下新町生れ。尾崎紅葉に師事した。夜行巡査、外科室で評価を得、高野聖で人気作家になる。
江戸文芸の影響を深くうけた怪奇趣味と特有のロマンティシズムで
知られる。また近代における幻想文学の先駆者としても評価される。
代表作品
婦系図
外科室
春昼
天守物語
夜行巡査
黒猫
本文内容見本
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春昼 泉鏡花
一
「お爺《じい》さん、お爺さん。」
「はあ、私《わし》けえ。」
と、一言《ひとこと》で直《す》ぐ応じたのも、四辺《あたり》が静かで他《た》には誰もいなかった所為《せい》であろう。そうでないと、その皺《しわ》だらけな額《ひたい》に、顱巻《はちまき》を緩《ゆる》くしたのに、ほかほかと春の日がさして、とろりと酔ったような顔色《がんしょく》で、長閑《のど》かに鍬《くわ》を使う様子が――あのまたその下の柔《やわらか》な土に、しっとりと汗ばみそうな、散りこぼれたら紅《くれない》の夕陽の中に、ひらひらと入《はい》って行《ゆ》きそうな――暖《あたたか》い桃《もも》の花を、燃え立つばかり揺《ゆす》ぶって頻《しきり》に囀《さえず》っている鳥の音《ね》こそ、何か話をするように聞こうけれども、人の声を耳にして、それが自分を呼ぶのだとは、急に心付《こころづ》きそうもない、恍惚《うっとり》とした形であった。
こっちもこっちで、かくたちどころに返答されると思ったら、声を懸《か》けるのじゃなかったかも知れぬ。
何為《なぜ》なら、さて更《あらた》めて言うことが些《ち》と取《と》り留《と》めのない次第なので。本来ならこの散策子《さんさくし》が、そのぶらぶら歩行《あるき》の手すさびに、近頃 買求《かいもと》めた安直《あんちょく》な杖《ステッキ》を、真直《まっすぐ》に路《みち》に立てて、鎌倉《かまくら》の方へ倒れたら爺《じい》を呼ぼう、逗子《ずし》の方へ寝たら黙って置こう、とそれでも事は済《す》んだのである。
多分《たぶん》は聞えまい、聞えなければ、そのまま通り過ぎる分《ぶん》。余計な世話だけれども、黙《だまり》きりも些《ちっ》と気になった処《ところ》。響《ひびき》の応ずるが如きその、（はあ、私《わし》けえ）には、聊《いささ》か不意を打たれた仕誼《しぎ》。
「ああ、お爺さん。」
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名作速読朗読文庫vol.350 泉 鏡花全集3 読上機能付Professional版
NO VOL 件数 選択 作家名 タイトル カテゴリー 文字数 文字量
1 350 1 日本文学 泉 鏡花 小春の狐 小説 15585 大
2 350 2 日本文学 泉 鏡花 菎蒻本 小説 18546 大
3 350 3 日本文学 泉 鏡花 三尺角 小説 15268 大
4 350 4 日本文学 泉 鏡花 三枚続 小説 77782 大
5 350 5 日本文学 泉 鏡花 式部小路 小説 88185 大
6 350 6 日本文学 泉 鏡花 七宝の柱 小説 12451 大
7 350 7 日本文学 泉 鏡花 朱日記 小説 16566 大
8 350 8 日本文学 泉 鏡花 春昼 小説 45330 大
9 350 9 日本文学 泉 鏡花 春昼後刻 小説 26924 大
10 350 10 日本文学 泉 鏡花 白い下地 小説 1372 小
11 350 11 日本文学 泉 鏡花 白金之絵図 小説 29421 大
12 350 12 日本文学 泉 鏡花 白花の朝顔 小説 36076 大
13 350 13 日本文学 泉 鏡花 神鷺之巻 小説 137786 大
14 350 14 日本文学 泉 鏡花 清心庵 小説 14399 大
15 350 15 日本文学 泉 鏡花 政談十二社 小説 29044 大
16 350 16 日本文学 泉 鏡花 雪霊記事 小説 7943 大
17 350 17 日本文学 泉 鏡花 雪霊続記 小説 7311 大
18 350 18 日本文学 泉 鏡花 第二菎蒻本 小説 19391 大
19 350 19 日本文学 泉 鏡花 多神教 小説 24385 大
20 350 20 日本文学 泉 鏡花 誓之巻 小説 8864 大
冊数合計 20冊 文字数合計 632629
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