豊島与志雄（とよしま よしお）は、日本の小説家、翻訳家、仏文学者、児童文学者で、法政大学名誉教授、明治大学文学部教授もつとめた。
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豊島与志雄（とよしま よしお）は、日本の小説家、翻訳家、仏文学者、児童文学者で、法政大学名誉教授、明治大学文学部教授もつとめた。
東京帝大在学中に、芥川龍之介、菊池寛、久米正雄らと第3次『新思潮』を刊行し その後、『レ・ミゼラブル』の翻訳を行い ベストセラーとなった
1923年（大正12年）、法政大学法文学部教授となり 再び旺盛な創作活動をはじめ、戦後は、第二次世界大戦により活動を停止していた日本ペン倶楽部の再建に尽力、
日本ペンクラブの幹事長に就任する 1949年（昭和24年）、法政大学名誉教授。同年、日本芸術院会員となった
代表作
小説「生あらば」「蘇生」「野ざらし」，翻訳「レ-ミゼラブル」「ジャン＝クリストフ」など
名作速読朗読文庫は、聞いても読んでも楽しめる日本の名作集です
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本文内容見本
立枯れ
豊島与志雄
穏かな低気圧の時、怪しい鋭い見渡しがきいて、遠くのものまで鮮かに近々と見え、もしこれが真空のなかだったら――と、そんなことを思わせるのであるが、そうした低気圧的現象が吾々の精神のなかにも起って、或る瞬間、人事の特殊な面がいやになまなましく見えてくることがある。そういうことが、小泉の診察室の控室で、中江桂一郎に起った。
小泉がキミ子を診察してる間、中江はその控室で、窓外の青葉にぼんやり眼をやりながら、しきりに煙草をふかしていた。てれくさい気恥しさなどは、もう少しも感じなかった。気の置けない友だちの間柄だから、紹介状を持って行ってごらんと、中江がいくら云っても、キミ子は駄々っ児のように顔を振るだけなので、中江はとうとう、自分で連れてくることにしたのだが、暫く躊躇していたキミ子は、俄に承知して、そうなると、知人のうちにでも遊びに行くといった調子になった。身体のことなんか自然に任せておけばよいので、ただ生きていて――そして働いてさえおれば――というのが彼女の平素の主張で、医者にかかることなどは贅沢となる、その贅沢が、今となっては、小泉のところへ――診察は第二として――中江と二人で行くという、或る物珍らしさのために、解消された形だった。だが、中江にしてみれば、彼女が時々胃部や腹部に鈍痛を感じ而もその鈍痛があちこち移動することや、また胸部に圧痛を覚えたりすることなどが、彼女の健康の全般的の衰微を暗示するように思われ、どこか一定の箇処の病兆よりも、一層気にかかるのであった
名作速読朗読文庫vol.250 Professional版 豊島 与志雄全集9
VOL 件数 タイトル カテゴリー 作家名 文字数 文字量
250 1 蛸の如きもの 物語 豊島 与志雄 9978 大
250 2 太宰治との一日 物語 豊島 与志雄 3578 中
250 3 立枯れ 物語 豊島 与志雄 20541 大
250 4 立札 ― 近代伝説― 物語 豊島 与志雄 10186 大
250 5 狸石 物語 豊島 与志雄 3456 中
250 6 狸のお祭り 物語 豊島 与志雄 5219 中
250 7 田原氏の犯罪 物語 豊島 与志雄 27851 大
250 8 旅だち ― 近代説話― 物語 豊島 与志雄 11966 大
250 9 旅人の言 物語 豊島 与志雄 1479 小
250 10 球突場の一隅 物語 豊島 与志雄 14161 大
250 11 小さき花にも 物語 豊島 与志雄 10044 大
250 12 地水火風空 物語 豊島 与志雄 1820 小
250 13 父と子供たち 随筆 豊島 与志雄 1518 小
250 14 父の形見 随筆 豊島 与志雄 6838 大
250 15 中支生活者 随筆 豊島 与志雄 4115 中
250 16 長篇小説私見 随筆 豊島 与志雄 4059 中
250 17 千代次の驚き 物語 豊島 与志雄 9411 大
250 18 「沈黙」の話 物語 豊島 与志雄 6123 大
250 19 月かげ 物語 豊島 与志雄 6869 大
250 20 憑きもの 物語 豊島 与志雄 10890 大
合計冊数 20 文字数合計 170102
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