名作速読朗読文庫vol.463矢田 津世子全集読上機能付きP


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Mar 30, 2018

About 名作速読朗読文庫vol.463矢田 津世子全集読上機能付きP

矢田 津世子(やだ つせこ)は、日本の小説家、随筆家である。はじめモダン派であったが純文学に転進した 文章力と美貌を兼ね備えた女流作家として人気を集めた。

矢田 津世子(やだ つせこ、本名矢田ツセ、1907年(明治40年)6月19日 - 1944年(昭和19年)3月14日)は、日本の小説家、随筆家である。

秋田県五城目町出身。はじめモダン派であったが純文学に転進し、1936年に小説『神楽坂』が第3回芥川賞候補に選ばれる。文章力と美貌を

兼ね備えた女流作家として人気を集めた。坂口安吾の恋人とされる。大和生命初代社長の矢田不二郎は兄。

本文内容見本

女心拾遺 矢田津世子

     一

 常は無駄口の尠い唐沢周得氏が、どうしたはずみか、この数日来妙に浮きたって、食事の間も駄洒落をとばしたりしては家人を笑わせたりする。もともと脂肪《あぶら》肥りの血色のよい膚《はだえ》が、こんな時には、磨きをかけたように艶光りして、血糸の綾《あや》がすけてみえる丸っこい鼻の頭には、陽ざしに明るい縁の障子が白く写っているように見える。前歯の綺麗に残っている口を大きく開けて、わっはっはっと身をもみながら高笑いをする仕草など、どうみても古稀に近い人とは思われず、この若やぎようを家人は奇異の眼ざしで眺めやるのだった。

 唐沢製鋼所の社長としての繁忙な地位を、二年前から女婿の横尾氏に譲って、今は気楽な閑居の身でありながら、元来、動きまわることの好きな性分がこの老齢になっても納まらず、朝は従前通り九時きっかりに出社して、午すぎてから戻ってくる。これという用事が待っているわけではなく、ただ、永年の習慣から出社をしてみなくては気がすまないのである。自動車で送られて社長室へ顔をみせ新社長の相談に乗ってやったり、電話を取り次いでやったり、それから社内を一巡して自動車で帰って来る。いわば、この出社は老人にとっては一種の運動のようなものであった。それが、この頃では興がのって工場の方までも見廻るという調子である。

「そんなに御無理をなすっては、お体にさわりましょう」

 老夫人の伊予子が宥めるようにこう云うのを、唐沢氏は大きく手を振って、

「なあに、これしきのこと。儂の体はまだ老耄れてやせんぞ」

 と身をもんで、わっはっはっと高笑いをするのだった。

代表作品

『神楽坂 小説集』改造社 1936

『女心拾遺』筑摩書房 1941

『茶粥の記』実業之日本社 1941

『鴻ノ巣女房』豊国社 1942

『駒鳥日記』富士書房 1942

『罠を跳び越える女』無双舎F文庫 2010

翻訳

ルイザ・メイ・オルコット『若草物語』金の星社 1949

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名作速読朗読文庫vol.463矢田 津世子全集読上機能付きProfessional版

vol 件数 選択 作家名 タイトル カテゴリー 文字数 文字量

463 1 日本文学 矢田 津世子 女心拾遺 小説 17685 大

463 2 日本文学 矢田 津世子 神楽坂 小説 19631 大

463 3 日本文学 矢田 津世子 女抄録 小説 32713 大

463 4 日本文学 矢田 津世子 鴻ノ巣女房 小説 11731 大

463 5 日本文学 矢田 津世子 旅役者の妻より 随筆 75615 大

463 6 日本文学 矢田 津世子 父 随筆 19080 大

463 7 日本文学 矢田 津世子 茶粥の記 随筆 14530 大

463 8 日本文学 矢田 津世子 凍雲 小説 14119 大

463 9 日本文学 矢田 津世子 反逆 小説 10553 大

463 10 日本文学 矢田 津世子 罠を跳び越える 小説 6296 大

合計冊数 合計文字数 221953

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